スペインリーグ・久保建英の現在地、スペイン各紙の反応から読み解く

久保建英、18歳。幼少期を名門バルセロナの下部組織で過ごし、その後も”飛び級”をしながら15歳にしてプロの世界に飛び込んだ。センス溢れるスキルフルなプレースタイルに、流暢なスペイン語。近い将来日本サッカー界を背負って立つことが期待される逸材だ。今回はそんな久保の現在地を現地メディアの報道から読み解いてみよう。

移籍後初アシストを記録

現地時間9月22日、19-20シーズンのリーガ・エスパニョーラ第5節ヘタフェ対マジョルカの試合が行われ、ホームのヘタフェが4-2で勝利を収めた。

この試合、マジョルカの日本代表MF久保建英は加入後から3試合連続のベンチスタートとなったが、前半18分、この日スタメンで出場したスペイン人MFサルヴァ・セビージャが負傷。急きょ監督に呼ばれた久保は、0-1とヘタフェに1点リードを許した前半19分からピッチに入った。

試合はホームのヘタフェが攻勢をかける展開で、マジョルカはボールをつなぐことができず、右サイドに入った久保も流れの中から良い形でボールを受けることができない。パスを受けても相手の厳しいプレスに倒されるシーンが目立ち、見せ場をつくることができないまま前半が終了した

後半に入ってもヘタフェのペースで試合が進むが、それでも、0-3とヘタフェに3点リードを許した後半70分、右サイドでボールを持った久保がペナルティエリア内に絶妙なクロスを供給すると、これをマジョルカのクロアチア人FWアンテ・ブティミールがヘッドで合わせて得点し、スコアを1-3とする。久保にとってはこれがマジョルカ移籍後初アシストとなった。

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この1点で反撃に出たいマジョルカだったが、その後試合は互いに1点ずつを取り合い、結局4-2でホームのヘタフェが勝利を収めている。

続く現地時間の9月25日に行われたリーガ・エスパニョーラ第6節、ホームにアトレティコマドリーを迎えた一戦で移籍後初となる先発出場をはたした久保は、試合を通して主導権を握ったアトレティコを相手に前半は消える時間が長かったものの、後半に入ると決定的なチャンスを生み出していく。

後半47分にはエリア内でパスを受け、ゴールまであと一歩にせまるポスト直撃のダイレクトシュートを放ち、アトレティコマドリーの絶対的守護神でスロベニア代表GKヤン・オブラクを慌てさせると、後半49分にはそのオブラクのパスミスを拾いドリブルからシュートを放ち存在感をみせる。

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試合はポルトガル代表FWジョアン・フェリックスの得点などで2点を奪ったアトレティコマドリーがマジョルカを0-2で下し、これでマジョルカはリーグ戦5試合未勝利となった。しかし、久保個人は2戦続けて確かな存在感を示すことに成功している。

激動の4ヶ月を過ごす

6月にFC東京からレアルマドリーへの移籍を発表してから、前述のアトレティコマドリー戦までの約4ヶ月間、久保を取り巻く環境は目まぐるしく変化した。

移籍発表直後の6月14日から24日には、日本代表の一員としてコパ・アメリカ2019に参加。

チームはグループリーグで敗退したが、久保自身は百戦錬磨の南米選手を相手に物怖じしない堂々としたプレーを披露し、自身がフル代表のレベルに十分達していることをアピールする。

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コパアメリカ後には休む間もなくレアルマドリーでのプレシーズンキャンプに合流。トップチームのカナダ遠征、ドイツ遠征に帯同すると、プレシーズンでは計5試合に出場。得点こそ奪えなかったものの、世界のトップスターが集うチームでもそのテクニックが十分に通用することを証明してみせた。

プレシーズンで周囲の予想を上回る活躍を見せた久保に対し、現地紙『AS』が「思っていたよりもトップチームに近い存在」と報じるなど、一時はシーズンでのトップチーム帯同も噂されたが、外国人枠の問題(レアルのEU圏外 外国人3枠は、ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオール、同代表DFエデル・ミリトン、ウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデ)もあり、レアルマドリーの指揮官ジダンは、久保と同時期に加入した18歳のブラジル人FWロドリゴ・ゴエスを、当面はトップチームの練習に参加させつつ、下部組織(カスティージャ)の試合で起用しスペインサッカーへ適応させるプランを明かす。

これに対し、カスティージャが所属するリーガ2Bは実質3部リーグに相当するため、プレシーズンで効果的なプレーを見せた久保にはすでにふさわしい舞台ではなく、他の1部クラブへレンタルして経験を積ませるべきだとの論調がサポーターや現地メディアを中心に沸き起こる。

バジャドリードをはじめとした複数クラブからの関心が伝えられ、残留かレンタル移籍かの判断が注目される中、移籍市場期限がせまった8月22日、最終的にマジョルカへの1年間のレンタル移籍が発表された。

マジョルカ移籍後、徐々に監督の信頼をつかむ

マジョルカ移籍後が発表されると現地紙『Diario de Mallorca』は「久保はテクニックのある攻撃的な中盤の選手だ。非常に洗練されており、優れたビジョン、ドリブル、そしてゴールに結びつけるセンスを持っている。また、ボールをコントロールする力は際立っている」と報じ加入を歓迎した。

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現地時間の9月2日、リーガエスパニョーラ第3節の敵地バレンシア戦で久保は後半79分から投入されマジョルカでのデビューを果たすと、この試合ではほとんどボールに絡むことができなかったが、そこから、移籍後初アシストを記録した第5節ヘタフェ戦、初先発した第6節アトレティコマドリー戦と確かな存在感を示し、第7節のアラベス戦では2戦連続となるフル出場を果たした。

アラベス戦では、前の2試合に比べると見せ場をつくることはできなかったものの、逆にこれまで強度不足が指摘されていた守備面で奮闘し、泥臭くチームに貢献する姿勢にサポーターも拍手を送っている。

マジョルカのビセンテ・モレノ監督は記者会見で「私は彼について毎試合後に話さなければならないことにうんざりしている。彼について個人的な評価をすることはしたくない」と話すなど、加入後にメディアから繰り返される久保への質問に辟易している様子をみせたが、出場時間の増加(加入後から3試合連続途中出場→2試合連続先発フル出場)が物語るように、指揮官からの信頼が日に日に高まっているのは間違いないようだ。

久保に対する現地での評価、今後の見通しは

マジョルカ移籍後、リーグ戦5試合に出場した時点での久保への現地評価は上々といえる。

チームは第7節終了時点で1勝1分5敗の勝点4で降格圏の19位に沈んでいるが、『Diario de Mallorca』は久保が初先発したアトレティコマドリー戦後に「彼はスピードと才能を兼ね備えた、センセーショナルなアクションでゴールに迫った。彼がボールに触れるたびに何かが起こるという、他の選手とは違う期待感がある」とし、久保のもつポテンシャルを認めた。

現地紙『Marca』はアラベス戦後に久保のプレーを「自らの個性を出して大胆さを示した。これから何が続いていくのか見ていきたい」と論評し、今後の活躍に期待を寄せている。

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エイバルに所属する日本代表MF乾貴士を除けば、成功といえる成果を残した日本人選手がいないリーガエスパニョーラの舞台で、18歳という年齢でスタメンで出場できるだけの実力を発揮していることは特筆に価するだろう。

何より、久保がピッチ上で見せるファンタジー溢れるドリブル、タッチ、パスは目の肥えたマジョルカサポーターを熱狂させ、間違いなくリーガ全体でも有望な若手選手として注目を集めている。

モレノ監督のもと、2017シーズンから破竹の勢いで3部から1部リーグまで駆け上がってきたマジョルカだが、ここまでの戦いを見る限りトップリーグを戦うに十分な戦力は持ち合わせておらず、低調なチームのなかで、今後久保にはゴールやアシストといった目に見える結果が求められるのはいうまでもない。

チーム全体としてパスをつなぐ意識が希薄で、まともにポゼッションもできない厳しい状況ではあるが、久保がこの激動の1年でみせた急激な成長曲線を持続できれば、あるいはーー。個人で戦況を覆すほどの、我々の想像を超えた活躍をみることができるかもしれない。

本場スペインも注目する若き才能の今後の活躍を願ってやまない。