”ネイマール狂想曲”の終焉。稀代の名手が歩む先は

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この男が新時代の旗手として人々に認められる日はくるのだろうかーー。

パリサンジェルマン(PSG)に所属するブラジル代表FWネイマールのことである。

18-19シーズン後半から続く怪我の影響でコパ・アメリカ2019を欠場した彼は、迎えた19-20のプレシーズン、ピッチに立つことはなくとも、それでも多いに世界を賑わせた。

6月にはSNS上で知り合った女性に対する婦女暴行疑惑が持ち上がり、自身のInstagramで女性とのやり取りを公開するなど身の潔白を訴えた(のちに被害を訴えた女性が詐欺罪で起訴されている)。

もっとも、それより世間を揺るがしたのは今夏の移籍市場における最大のビッグディールと目された、ある可能性についてだ。

ネイマールがバルセロナ復帰へ

ネイマールがパリ脱出を図ろうとしていることが判明すると、各国メディアは盛んにその可能性を報じた。

行き先は古巣バルサか、はたまたその永遠のライバル・レアルマドリーかーー。

PSGのドイツ人指揮官トーマス・トゥヘルは「解決策がないのであれば残留するだろう。契約期間は残っており、クラブに多大な貢献ができる選手だ」とネイマールの戦力としての価値を説いた。

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一方、クラブに忠誠を見せないスーパースターをサポーターたちは厳しく批判。

8月末、移籍市場のリミットが迫るなか、ネイマールについて訊かれたPSGのレオナルドスポーツディレクターは「現時点で合意に至るような状況ではない」と答えている。

バルセロナは今夏のネイマール獲得に相応の力を入れていたようだ。

現地では、バルサ側が昨シーズンの主力であるクロアチア代表MFイヴァン・ラキティッチ、フランス代表FWウスマン・デンベレに金銭を加えた条件、あるいは1億ユーロ+ブラジル代表MFフィリペ・コウチーニョでネイマールのチーム復帰を画策したと報じられている。

これに対し、あくまで2年前にネイマールを買い取った2億2千万ユーロと同等、或いはそれ以上の金銭的価値を求めるPSG側との交渉は難航し、ついに両者が合意に至ることはなかった。

結局、ネイマールが自身の年棒減額を受け入れてまで熱望した、”故郷”カタルーニャへの今夏の帰還は叶うことなく、移籍市場は幕を閉じた。

一部では、バルサ・PSG双方が、実はこの取引を本気で完了する気がなく、メッシなどの主力選手が彼の復帰を望んだため、ポーズとして交渉したのではないかとする向きもある。

いずれにせよ、ネイマールは”パリの王様”として3シーズン目を迎えることが決定した。

PSGへ移籍する際に支払われた天文学的な金額に、彼は今その両脚をしっかりと掴まれている。

遠のく世界一への夢

ネイマールがメッシの良きパートナーであることを良しとせず、自らが目指す頂のために、花の都パリへやってきたのが2017年の夏。

そこからの2年間で、ネイマールはPSGの選手として58試合に出場し51ゴールを挙げている。

加入初年の17-18シーズンにはリーグMVPに輝き、チームも17-18、18-19シーズンとリーグ・アン2連覇を達成した。

ピッチ内外で最も影響力のある選手として君臨し、誰の目で見ても、もはやリーグ・アンのレベルでないことは明らかだ。

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しかし、ここまで傑出した結果を残しながら、選手としての評価が上がる気配はない。

リーグのレベルに似つかわしくないセンスや技巧は、時に敬意を欠いたエゴイスティックなプレーとしてやり玉に揚げられることも多い。

自らが欲する「世界一の選手」という称号へは欠かせないーークラブの悲願でもあるーー欧州チャンピオンズリーグ(欧州CL)のタイトル。しかし、肝心のノックアウトステージでは、怪我の影響もあり、勝負どころで2シーズン続けてピッチに立つことすらできていない。

同僚のフランス代表エムバペが驚異的な成長を遂げる中、もはやメッシ、ロナウドに次ぐ世界3番手の選手という評価すら危うくなってきた。

そして、PSGに移籍してからの2シーズン、FIFA が選ぶ年間最優秀選手のトップ10にすらノミネートされていないのは、忘れ去られがちな事実だ。

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結果は残すが、忠誠心に疑問符がつき、勝負どころで頼りにならない。

怪我が絡む不運な側面もあるが、それを彼の派手な夜遊びをはじめとした生活習慣と結びつける批判も多い。大金がかけられたスーパースターに対する評価は日に日に厳しさを増している。

ネイマール自身もそんな状況に嫌気がさしたのか、母国のチャリティーイベントに出席した彼は、ロッカールームでの最高の思い出を問われ、あろうことか「バルセロナ時代に、欧州CLでPSGに6-1の逆転勝利を果たした試合」であると答え物議を醸した。

ここに、前述の移籍騒動である。

ネイマールを取り巻く環境は、もはや出口の見えない深い迷宮と化している。

フットボールの能力に疑いの余地はないが……

9月14日、リーグ・アン第5節、ホームスタジアムのパルク・デ・プランスにRCストラスブールを迎えた一戦、ネイマールは約4ヶ月ぶりにPSGのユニフォームに袖を通し試合に臨んだ。

サポーターはネイマールに対する不満を隠そうとせず、ホームにもかかわらず凄まじいブーイングを浴びせる。一部の熱狂的サポーターたちは「出ていけ、ネイマール」と書かれた横断幕を掲げ、リーグアン最大のスター選手であっても、チームには必要ないという意思表示を打ち出した。

ゲームが始まっても、ネイマールがボールに触れるたびにブーイングが巻き起こる。

異様な雰囲気のなか、それでもネイマールは冷静さを失わず、時折軽やかな身のこなしと周囲との連携でストラスブール守備陣を切り裂いていく。

しかし、相手の奮闘もありスコアは0-0のまま試合は後半アディショナルタイムに差しかかる。

誰もがドローを確信したその時、ドラマが待っていた。

左サイドのフランス人DFアブドゥ・ディアロが放った、ややマイナス気味の難しいクロスに、エリア内にいたネイマールが反応。

相手DFに囲まれた厳しい状況下で、身体を宙に浮かせると、倒れこみながら右足を一閃。ここしかないというタイミングの華麗なバイシクルシュートが左ポストを叩き、そのままゴールへ吸い込まれる。

歓喜に沸くパルク・デ・プランス。実況も思わず唸るスーパーゴールに、ネイマールは飛び上がりガッツポーズで応え、チームメイトたちが祝福する。結局試合はこの1点を守りきり、PSGが1-0で勝点3を得ることに成功した。

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だが、勝利の立役者となった後も、ネイマールを揶揄する罵りや口笛が収まることはなかった。

試合後にインタビューを求められたネイマールは、「ブーイングを受けたのはこれが初めてではない」「誰もが僕が去りたがったことを知っている。何が起こったのかを、詳細に話すつもりはない」「今日の僕はPSGの選手だ、ピッチに立てば常に全力を尽くすつもりさ」とその覚悟を語った。

ホームでの凄まじいブーイングにも怯まず、その稀有な才能に疑いの余地がないことを、ピッチ上のプレーをもって証明したあたりはさすがだろう。

だが、ネイマールが立ち向かうべき本当の戦いはこれからだ。

今夏の移籍騒動で周囲を振り回し、サポーターから失った信頼を取り戻すのは容易ではない。

選手としての評価もパリに留まり続ける限り、リーグでの活躍は加味されない。

名実ともに世界一の選手となるためには欧州CLで優勝する必要があるだろう。

はたして、メッシ、ロナウドに変わる、新時代の旗手として、人々がネイマールを認める日はくるのだろうか。

そして、その時に彼が纏うユニフォームはPSGのそれか、それともーー。